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善玉と悪玉がある腸内細菌

善玉と悪玉がある腸内細菌

東大名誉教授 光岡知足

快適な温度と食物にめぐまれ
食物は口から入って食道、胃、小腸、大腸を通り、その間に消化、吸収されて残り物などが排せつされる。これら食物の通路は 常に36℃前後という温度になり細菌にとっては快適にみえる。しかし胃は強い酸性、小腸は胆汁(たんじゅう)や、すい液などが分泌され激しいぜん動のために住みにくいようだ。ほとんどの細菌は動きがゆっくりで酸性度も中性に近い大腸に住んでいる。
 「腸内細菌は、個人差はありますがほぼ100種類、100兆個も住んでいて一部は糞便の約三分の一を占めています。これだけ住んでいるのですから人間の体はいろんな影響を受けています」
 細菌には、腸内をきれいにする善玉菌と汚す悪玉菌がある。
 善玉菌の代表は乳酸菌に属するもので乳酸桿(かん)菌やビフィズス菌(写真1)などがある。主に炭水化物や人間には消化できない乳糖やオリゴ糖を消費して乳酸は酢酸などを作りカロリー源として役立っている。また酸性物質をつくるので、アルカリ性を好む善玉菌の増殖を抑え、腐敗を防止することにもなる。
 漢方薬には薬効を持つ物質に糖がついていることが多く、そのままでは吸収されずに排せつされる。腸内細菌によってこの糖が切り離されると吸収することができ薬効が発揮されるといわれている。
 悪玉菌には、大腸菌やウェルシュ菌(写真2)などがある。主にタンパク質を分解し、アンモニア、硫化水素、インドール、フェノール、メルカプタノなど悪臭、老化の促進や発がん物質などの有毒なものを作る。

悪玉菌は肉類が大好き

 腸内の細菌の様子は、食事 ストレス、抗生物質などによって変化する。
 「肉中心の食習慣では大腸がんや乳がんが発生しやすいことが分かっています。肉類は善玉菌の食料となり発がん物質に変えられやすいからです」
 肉類には脂肪とタンパク質が多く含まれている。脂肪を消化吸収するために、肝臓で作られた胆汁が十二指腸に分泌される。その主成分は一次胆汁酸で一部は大腸に流れ込む。すると、一次胆汁酸は悪玉菌によってがん発生の原因とされる二次胆汁酸に変えられる。
 「現在の日本人の死因のトップはがん。かつては、胃がんが最も多かったのですが細菌では大腸がんや乳がんの方が多い。これは、食習慣の変化によるものと考えられます。更に、肺がんの増加にも悪玉菌がかかわっています。
 肺がんの原因は主としてタバコいわれている。タバコの煙に含まれている発がん物質は、肺から血中に入って肝臓でタウリンやグリシンなどで包まれて無毒化され一部は小腸に排せつされる。
 しかし、せっかく解毒されたのに、ウェルシュ菌やバクテロイデスといわれる悪玉菌が持つβ(ベータ)グルクロニダーゼという酵素によって分解され、再び発がん物質が体内に蓄積されていく。
 また、悪玉菌が作り出す有毒物質もこうした悪循環を繰り返し肝硬変などによって肝機能が低下してくると肝性昏睡(こんすい)を起こしたりしてしまう。

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