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腸内細菌はガン予防にも効く

腸内細菌はガン予防にも効く

 腸内細菌叢がガンの発生に関わっているというと、やっぱり細菌は恐いと感じる人もいるかもしれない。しかし、細菌というのは複雑で、一面だけをとらえて、こう結論を出せないものである。何度もいっているが、同じ細菌でも環境によっていい働きもすれば、悪い働きもする。

 腸内細菌の優等生のように思われているビフィズス菌も、第二次胆汁酸を脱抱合する力を持っている。しかし、いつでも脱抱合するというのではなく、腸内のPHなどある種の条件が整ったときに、そうした働きをするのである。

 このように、いっぽうでガンを発生、促進させる物質を産生することのある腸内細菌叢だが、そのいっぽうでガンを予防するのではなく、細菌がつくる発酵物質の一つである酪酸が腸内に少ない人は結腸ガンが発生する確率が高いことがわかった。腸の酪酸産生量が少ない人は結腸ガンになりやすいのである。また、結腸に腫瘍を持っている人は同じように細菌のエサとなり、酪酸の原料となるペクチンを投与しても、酪酸の産生が弱く、量が少ない。

 注目しなければならないのは、酪酸がガン細胞を殺す効果があるということだ。細胞はアポトーシスという死ぬための遺伝子によって寿命が決められ、決められた寿命がくるとその細胞は死に、新しい細胞に変わっていく。だが、ガン細胞は増殖作用がひじょうに強く、つねに働いているため、何代でも消えずに残り、増え続ける。

 ところが、酪酸にはガン細胞に死ぬためにアポトーシス遺伝子を発現させる働きがある。なかなか死なないはずのガン細胞が、酪酸の働きによって発現したアポトーシスによって寿命が決められ、死んでいく。その結果、たとえガン細胞ができても増殖することがないから、ガンの発生につながらないのである。

 人間は新陳代謝によって、つねに新しい細胞がつくられている。同時に古い細胞は死んでいく。それはアポトーシスの働きがあるからだ。これは人間ばかりでなく、すべての生物に共通のことで、プログラムされた細胞死といういい方もある。カエルがオタマジャクシからカエルになるとき、尾がなくなるのもプログラムされた細胞死だ。

国立予防衛生研究所 森下芳行博士

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